第161章

田中美咲はそれを見るなり、困ったように表情を曇らせて扉の前に立ちはだかり、貴客の申し出をやんわりと退けた。

「旦那様。旦那様が久世家の大切なお客様であることは承知しておりますが……こちらは当家のお嬢様のお部屋でございます。さすがに、お客様をお通しして中をご覧いただくのは……」

「どうしてもご覧になりたいのでしたら、お嬢様がお戻りになってから――お嬢様ご本人にご案内させてはいかがでしょう」

田中美咲には分かっている。いまの酒井初音が久世家との関係で、進んで戻ってくるはずがないことを。

この屋敷の「一歩一景」だって、結局はあの子の一言で決まってきたのだ。

「お前の言い方だと、酒井初音は...

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